*** LP ： UK / 82 / Dingle’s / DIN 323 ***
■　コンディション　■
A- / A
ジャケットには角打ちや抜けなどの多きなダメージはないのですが、表裏ジャケットの上部に経年の薄い染みがぼんやりと浮いているので「A-」の評価です。
盤面にはひげや気になる擦れはなく、中古としては申し分のないコンディションです。
マトリクスは手書きで枝番なし。

マギー・ホーランドやイアン・A・アンダーソン（Ian A. Anderson）、スー・ハリスを中心に発表されたイングリッシュ・カントリー・ブルース・バンドの82年の唯一のアルバムです。
ゲストにジョン・カークパトリックとニック・ジョーンズが参加しており、ニックは最末期の録音となりました（2人の共演については後述します）。
今でも地道な活動を続ける英国の女性シンガー、ギタリストのマギー・ホーランドは本作の録音後、イアン・A・アンダーソンのプロデュースで83年にソロ・デビューを果たします。
つまり本作は、70年代前半から英国のフォーク･クラブで活動していた秘蔵っ娘といってもいいマギー・ホーランドのソロ・デビュー前に、イアン・A・アンダーソンがマギーのために贈ったアルバムなのかもしれません。
ほとんど知られていないアルバムですが、ジョン・カークパトリックとニック・ジョーンズといった豪華な客演もうなずけますね。
内容も裏切っておらず、本作は82年の作品ですが70年代中頃までの強烈な英国フォークの香りがします。
ジミー・リードやハンク・ウイリアムスといったオールド・タイミーな米国ミュージシャンの曲もカヴァーしていますが、全体のサウンドは「濃密な英国匂い」に満ちています。
なかでも英国フォーク・ロック／トラッド・ファンの心を捉えて離さないのは、01「Baby, What You Want Me to Do」でしょう。
ジミー・リードのブルースのカヴァーなのに、思い切りブリティッシュなアレンジが施されており、更にたまらないのは、ジョン・カークパトリックのコンサーティナとニック・ジョーンズのフィドルが柔らかく溶け合っているのです！
こんな調子で全曲の感想を書くと長くなるので……
ニック・ジョーンズの最末期のフィドルが聴ける07「Handsome Johnny」も、テクニカルなのに実に軽やかで踊りたくなるようなプレイを披露しています。
恥ずかしながら、私も軽んじていた1枚です。
アン・ブリッグスに似た声質で淡々と歌っているマギー・ホーランドのヴォーカルも、実に英国国的な凛とした雰囲気があってたまらないですよ。
70年代の英国フィーメール・フォークのファンの方に自信を持ってお勧めできるアルバムです。
【参加ミュージシャン】Maggie Holland, vocals, bass guitar, banjo, guitar
Ian A. Anderson, vocals, guitar, bottleneck guitar
Rod Stradling, melodeon
Sue Harris, hammered dulcimer, oboe
With
John Kirkpatrick, concertina [1, 9], accordion [4]
Nic Jones, fiddle [1, 7]
Dave Peabody, harmonica [1, 12]
Chris Coe, vocals [4-5, 7, 10]
Danny Stradling, tambourine [7, 11]
【収録曲】
01. Baby, What You Want Me to Do (3.20) Jimmy Reed
02. Travellers in Heaven (2.56) Derby Smith
03. Strong Man (3.15) trad. arr. Ian A. Anderson
04. Oregon / Portland Town (5.35) Tucker Zimmerman / Darroll Adams
05. Weary Blues (3.23) Hank Williams
06. Under the Waterbed / Under the Army Blanket (3.57) trad. arr. Ian A. Anderson, Maggie Holland, Rod Stradling
07. Handsome Johnny (2.56) trad. arr. Maggie Holland
08. Rambling Boys of Pleasure (4.57) trad. arr. Maggie Holland
09. The Panic Is On (2.12) trad. arr. Ian A. Anderson
10. The Weave Room Blues (4.08) Dorsey Dixon
11. The Nutting Girl (3.41) trad. arr. Maggie Holland
12. We Got Hard Times Now (3.22) trad. arr. Ian A. Anderson