*** LP ： Japan / 73 / Polydor / MR 5033 ***
■　コンディション　■
A- / A
ジャケットにリングウエアや抜けはないのですが、内ジャケットに薄らとした染みが浮いているので「A-」の評価です。
盤面にはひげも気になる擦れもなく、中古としては申し分のないコンディションです。
帯（破れなし）と8ページのブックレットを付属。

斉藤ノブとのデュオ、シモンサイを経て東京キッドブラザーズに参加した下田逸郎が、初ソロ作『遺言歌』を発表した後にNYに渡り、帰国した73年に発表した2作目です。
マーシー・スティンとの共同作業の結晶ともいえる内容で、作詞をA面が下田、B面をマーシー・スティンが担当しています。
若き日のヴィッキー・スー・ロビンソン（76年に「妖精のメロディー」が大ヒット）とゴスペル歌手アレキサンダー・イーズリィがコーラスで全編に参加し、特に英語詞のB面はほとんど本場アメリカのアシッド・フォークと言われても、誰も疑わないでしょう。
パーカッションと生ギターと3人の歌とスキャット、フェイクが延々と絡み合った深く沈んだフォーキーなアンサンブルは、アシッド・フォークとゴスペルが融合したようなウネリのある唯一無二の内容です。
またヴィッキー・スー・ロビンソンによる寄り添うような女声ヴォーカルがほぼ全編で印象的な効果を上げており、英米問わずサイケやフォーク方面の混成ヴォーカル好きも頷いてしまうでしょう。
盟友である斎藤ノブと名ジャズ・ドラマー猪俣猛がパーカッションなのですから、リズムが如何に強力であるかも想像するに難くないですよね。
日本語詞のA面は国民的遺産といってもいい南正人『回帰線』に通ずる日本的情念を感じさせるサウンドで、英語詞でヴィッキー・スー・ロビンソンがメイン・ヴォーカルをとる曲もあるB面はミュージカル『ヘアー』を連想させてくれると思ったら、実際に本作の録音前にヴィッキー・スーは『ヘアー』や『ジーザス・クライスト・スーパースター』に出演していたのですね。
東京キッドブラザーズとも深い関わりがあり、渡米した下田逸郎ですので、演劇的要素も少々絡めたB面の完成度は、日本では比較になる作品が思い浮かばないほど高いです。
煙草の先だけがピンクのジャケットも、本作の雰囲気を的確に伝えてくれる秀逸なものです。
近年では海外での評価が上昇中のようで、元々日本でもヒット作ではないので（本作のような先進的かつ孤高な内容を受け入れるだけの下地はまだなかったでしょう）オリジナル盤が入手困難になることは間違いありません。
【収録曲】
A-1. 飛べない鳥と飛ばない鳥 6:02
A-2. あなたには 3:34
A-3. みんな誰でも 3:44
A-4. ふたつの舟 4:26
A-5. 帰ろう 6:02
B-1. ALL THIS TIME 3:48
B-2. I CRIED 3:47
B-3. TWO VOICES 4:03
B-4. LIKE A CHILD 3:14
B-5. MOVING ON 3:32
【クレジット】
Vocals, Guitar ; 下田逸郎
Vocals ; Vicki Sue Robinson、Alexander Wasley
Bass ; 寺川正興
Lead Guitar ; 安田裕美
Conga, Bongo ; 斎藤伸雄
Drums ; 猪俣猛
Music ; 下田逸郎
Words ; 下田逸郎（A面）、Marci Sutin（B面）