*** LP ： Japan / 70 / キング (CTI) / SR 3302 ***
■　コンディション　■
B / B+
SPSE ; ジャケットの背が8cm、背の上部に10cm、天に12cmと4cmほどの割れがあるので「B」の評価です。
四角に角打ちがありますが、極厚ジャケットなので表裏への大きなダメージはありません。
RW ; 裏ジャケット上部に極薄いリングウエアがあります。
ダメージを列挙しましたが、美麗な横顔の写った表ジャケットは綺麗です。
日本盤は見開きジャケットで裏ジャケットが異なり、内ジャケットには米国オリジナルでは裏ジャケットに掲載されていた歌詞とポートレイト写真（これは未掲載）が載っています。
盤面にひげが数本、薄い塩ビ焼けがあるので「B+」にしましたが、気になるノイズは拾いませんでした。
A面のレーベルに8mm×3cmほどの「見本品」の判子が押してあります。
帯は付いていませんが、詳細なライナーは付いています。

17歳ということ以外はベールに包まれ（てい）た女性SSWのキャッシー・マッコードが69年に残したたった1枚のアルバムです。
70年代にフージョン・ブームの一翼を担った「CTI」レーベルの第一弾として発表されたのですが、ジャズ系のレーベルゆえ当然SSWやロック・ファンの知るところとはならず、悲惨なほど売れずに「幻のアルバム」になってしまいました。
バックがなかなか強力でして、後年オーリアンズを結成する（Orleans）のジョン・ホールとウェルズ・ケリー、エレクトリック・フラッグの『The Trip』でもベースを弾いていたハーヴェイ・ブルックス、多くのSSW作品で活躍するポール・ハリスに加え、ジャズ・フルートの第一人者であるヒューバート・ロウズといった豪華なメンバーが参加しています。
内容もバック・アップ・ミュージシャンに恥じない高レベルなもので、基調となっているのはダウナーでメランコリックなアシッド・フォークなのですが、ベタな感じのホーンが入ったり、カントリーやグッドタイムミュージックなどのルーツ系の要素が詰まっています。
まずは穏やかに始めるA-1の途中からジョン・ホールが狂ったように弾きまくる「サイケ」としかいいようのないギターに腰を抜かすでしょう（ジョン・ホールのファンなら尚更！）。
続くビートルズのカバーA-2は、アコースティック・ギターの伴奏に控えめなストリングスやコーラスが幻想的でメランコリックでアシッドな雰囲気がムンムンします。
他の曲も、典型的な女性SSWもの、オールド・タイミーなラグタイム風、なんとなくローラ・ニーロを思い起こすA-5とB-3、カントリータッチな曲、ウッドストック的アーシーな曲とヴァラエティーに富んでいるのに、全体に浮遊感が漂っている実に聴き応えのあるアルバムです。
ビートルズのA-2以外は全てキャシー・マッコードのオリジナルですが、録音当時はまだ若干17歳……憂いがあってどこか醒めた感じのするヴォーカルは実に魅惑的ですし、楽曲のレベルも数年後のSSWブームの女性SSWアルバムの大半を凌駕しています。
アシッド・フォーク、ソフト・ロック、ルーツ・サウンド、どのジャンルが好きな人でも耳を傾けたら「大好きになちゃう」大傑作です。
【収録曲】
A-1. Rainbow Ride
A-2. I'm Leaving Home
A-3. Candle Waxing
A-4. Baby James
A-5. The Love Flow
B-1. New York Good Sugar / Love Lyric #7
B-2. For You, Child
B-3. Jennipher
B-4. Take Away This Pain
B-5. Velvet Smile
【参加ミュージシャン】
Harvey Brooks ; Leader and Bass
John Hall ; Guitar
Paul Harris ; Piano and Organ
Wells Kelly ; Drums
Ed Shaugnessy ; Drims, Table
Hubert Laws ; Flute
Strings and Brass Arrangements by Don Sebesky